『もう時効だけど…』の裏側!犯罪の時効ってなぜあるの?仕組みと期間を解説

『もう時効だけど…』の裏側!犯罪の時効ってなぜあるの?仕組みと期間を解説 ひっくり事件

Q.よくテレビやYouTubeなどで
もう時効だけど..」とエピソードを話す方がいます。
例えが、中学生の頃から馬券を買っていたとか
高校生の頃から酒を飲んでいたとか、
万引きしたとか色々です。
時効という言葉は知っていますが
なぜ存在するのでしょうか?
特に殺人や詐欺の場合は時効無しでよいと思いませんか?
また、それぞれの犯罪につき時効の期間を教えてください。

以下に、時効の存在理由、
殺人や詐欺などの時効の有無、
具体的な時効期間、そしてご指摘の例
(馬券購入や飲酒)についてわかりやすく説明します。

1.なぜ「時効」が存在するのか?

時効(刑事訴追における公訴時効)は、
一定期間が経過すると犯罪者を訴追できなくなる制度です。
これにはいくつかの理由があります。

証拠の保全と信頼性の低下

時間が経つと、証拠(物証や目撃証言など)が散逸したり、
記憶が曖昧になったりして、公正な裁判が難しくなります。

誤った判決を防ぐため、
一定期間で訴追を打ち切る必要があるとされています。

社会秩序の安定

いつまでも過去の犯罪を追及し続けると、
加害者が社会復帰できず、
社会全体の安定が損なわれる可能性があります。
時効は「過去のことは水(見ず)に流す」ことで、
新たなスタートを促す役割も果たします。

国家の訴追負担の軽減

無期限にすべての犯罪を追及するのは、
警察や検察の負担が大きく
リソースを効率的に使うために時効が設けられています。

人権保護

長期間、犯罪の嫌疑を
かけられたまま生活するのは、精神的な負担が大きいです。
時効は、一定期間後にその不安から解放する役割もあります。

ただし、ご指摘のように、
重大な犯罪(特に殺人)については
「時効をなくすべきでは?」という意見は根強く、
日本でも法改正が行われた背景があります。
以下で詳しく説明します。

2.殺人や詐欺の時効について

日本では、2010年4月27日に
「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が施行され、
重大犯罪の時効制度が見直されました。
以下に、現在の状況を説明します。

殺人事件の時効

2010年改正前

殺人罪の公訴時効は25年でした。
例: 1985年に起きた殺人事件は、
2010年までに訴追されなければ時効成立。

2010年改正後

人を死亡させた罪
(殺人罪、強盗致死罪、傷害致死罪など)
については、公訴時効が廃止されました

→ つまり、2010年4月27日以降に起きた殺人事件は、
時効がなく、いつでも訴追可能です。

経過措置

2010年4月27日時点で時効が完成していなかった殺人事件
(例: 1990年の事件で2015年までに時効が来る予定だったもの)は、
時効が停止され、引き続き訴追可能です。
ただし、改正前にすでに時効が成立していた事件
(例: 1980年の事件で2005年に時効完成)は、
遡及適用されないため時効が有効です。

詐欺罪の時効

詐欺罪(刑法第246条)の公訴時効は7年です。
詐欺罪は、被害額や状況によって刑罰の重さが変わりますが、
基本的に時効は7年で、2010年の改正でも時効廃止の対象にはなりませんでした。
例: 2018年に詐欺を犯した場合、2025年までに訴追されなければ時効成立。

時効が廃止された犯罪

2010年の改正で、以下の犯罪は
「人を死亡させた場合」に限り公訴時効が廃止されました。

殺人罪(刑法第199条)
強盗致死罪(刑法第240条)
強姦致死罪(改正前の刑法第241条、現在は強制性交等致死罪)
傷害致死罪(刑法第205条) など

その他の犯罪の時効期間

日本の刑法および刑事訴訟法に基づく公訴時効の期間は、
犯罪の法定刑(最高刑)によって異なります。
以下は主な犯罪の時効期間(2010年改正後の基準)。

法定刑(最高刑)
公訴時効期間
例(犯罪)
死刑
時効なし(2010年改正後、死亡結果を伴う場合)
殺人、強盗致死
無期懲役・禁錮
15年
強盗強姦、放火(現住建造物等放火)
7年以上の懲役・禁錮
10年
強盗、強姦(現:強制性交等罪)
5年以上の懲役・禁錮
7年
詐欺、窃盗、傷害
5年未満の懲役・禁錮
5年
業務上横領、器物損壊
3年未満の懲役・禁錮
3年
名誉毀損、侮辱
拘留または科料
1年
軽犯罪法違反(例:ゴミの不法投棄)
注意
時効は犯罪行為が終了した時点から進行します。
ただし、海外逃亡などで捜査が困難な場合は
時効が停止することがあります(刑事訴訟法第255条)。
時効は「公訴提起(起訴)」までが対象で、起訴後は時効が停止します。

3. ご指摘の例について(馬券購入、飲酒、万引き)

中学生の頃から馬券を買っていた

法的背景

日本では、競馬の馬券購入は
20歳未満の者が行うと「競馬法違反」(競馬法第29条)になります。

ただし、これは行政上の規制違反で、
刑事罰(懲役や罰金)ではなく、
馬券の没収や購入禁止などの措置が主です。

逮捕の可能性

通常、未成年が馬券を購入しても、
逮捕されるケースはほぼありません。
現場で注意されたり、馬券を没収されたりする程度です。

刑事事件として立件されることはまれで、
警察が動く場合も「補導」が一般的です。

時効

競馬法違反の公訴時効は3年(罰金刑相当)。
ただし、未成年者の場合は少年法が適用され、
保護観察や補導で終わる場合がほとんどです。

高校生の頃から酒を飲んでいた

法的背景

20歳未満の飲酒は「未成年者飲酒禁止法」
(明治33年制定)により禁止されています。

ただし、飲酒自体に対する罰則はなく、
酒を提供した側(店や親など)が処罰対象(罰金50万円以下、懲役なし)です。

逮捕の可能性

未成年が飲酒しても、
逮捕されることはありません。
警察に発見された場合は補導され、
保護者に連絡が行くことが一般的です。
刑事事件には発展しにくいです。

時効

飲酒自体は犯罪ではないので、
時効の概念は適用されません。
提供者側の違反については、時効は3年(罰金刑相当)。

万引き

法的背景

万引きは刑法第235条の「窃盗罪」に該当し、
7年以下の懲役または38万円以下の罰金が科されます。

逮捕の可能性

万引きは刑事犯罪であり、
警察に通報されれば逮捕される可能性があります。

ただし、初犯で被害額が少額の場合、
被害者が告訴しない、または示談が成立すれば不起訴になることが多いです。
未成年者の場合は、少年審判や保護観察になる可能性が高いです。

時効

窃盗罪の公訴時効は7年。
例: 2018年に万引きした場合、
2025年までに起訴されなければ時効成立。

補足

中学生や高校生の軽微な違反(馬券購入や飲酒)は、
刑事事件として扱われるより、
少年法に基づく「非行」として
補導や指導の対象になることがほとんどです。
逮捕に至るケースはまれで、教育的措置が優先されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました